富田社会保険労務士事務所

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【同一労働同一賃金】基本給の取扱い

 同一労働同一賃金について、同一労働同一賃金ガイドラインには、基本給をはじめとする賃金についての原則的な考え方や、問題とならない例・問題となる例が記載されています。
 その同一労働同一賃金ガイドラインの中から、「基本給」に関する内容を抜き出してまとめました(パートタイマーと有期雇用の方々に関する内容になっています。派遣労働者の方々については、最後に記載しています)。
 なお、同一労働同一賃金の基本的な考え方などの概要については、どうぞ下記のページをご覧ください。

【同一労働同一賃金ガイドライン】
【同一労働同一賃金の説明義務】
【同一労働同一賃金を動画で解説!】

【注意!】

 総合職、限定正社員などの「異なる正社員」(無期雇用フルタイム労働者)間の待遇差は、同一労働同一賃金の規定の対象にはなっていません。


【基本給】の区分について

 同一労働同一賃金ガイドラインでは、基本給に関して、次の4つの種類に区分して原則的な考え方等が示されました。このTopicsでも、この区分に従ってまとめました。

【ガイドラインでの区分】
 ①労働者の能力又は経験に応じて支給する基本給
 ②労働者の業績又は成果に応じて支給する基本給
 ③労働者の勤続年数に応じて支給する基本給
 ④労働者の勤続による能力の向上に応じて行う昇給


労働者の能力又は経験に応じて支給する基本給

原則となる考え方

 基本給であって、労働者の能力又は経験に応じて支給するものについては、能力又は経験が同一ならば同一、相違があるならば相違に応じて支給しなければなりません。

【注意!】

 原則となる考え方等に反した場合、待遇の相違が不合理と認められる等の可能性があります。

【問題とならない例】

例1

 基本給について、労働者の能力又は経験に応じて支給しているA社において、ある能力の向上のための特殊なキャリアコースを設定している。通常の労働者であるXは、このキャリアコースを選択し、その結果としてその能力を習得した。短時間労働者であるYは、その能力を習得していない。A社は、その能力に応じた基本給をXには支給し、Yには支給していない。


例2

 A社においては、定期的に職務の内容及び勤務地の変更がある通常の労働者の総合職であるXは、管理職となるためのキャリアコースの一環として、新卒採用後の数年間、店舗等において、職務の内容及び配置に変更のない短時間労働者であるYの助言を受けながら、Yと同様の定型的な業務に従事している。A社はXに対し、キャリアコースの一環として従事させている定型的な業務における能力又は経験に応じることなく、Yに比べ基本給を高く支給している。


例3

 A社においては、同一の職場で同一の業務に従事している有期雇用労働者であるXとYのうち、能力又は経験が一定の水準を満たしたYを定期的に職務の内容及び勤務地に変更がある通常の労働者として登用し、その後、職務の内容や勤務地に変更があることを理由に、Xに比べ基本給を高く支給している。


例4

 A社においては、同一の能力又は経験を有する通常の労働者であるXと短時間労働者であるYがいるが、XとYに共通して適用される基準を設定し、就業の時間帯や就業日が土日祝日か否か等の違いにより、時間当たりの基本給に差を設けている。

【問題となる例】

 基本給について、労働者の能力又は経験に応じて支給しているA社において、通常の労働者であるXが有期雇用労働者であるYに比べて多くの経験を有することを理由として、Xに対し、Yよりも基本給を高く支給しているが、Xのこれまでの経験はXの現在の業務に関連性を持たない。


【注意!】

 ガイドラインにおいて、「事業主が通常の労働者と短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者との間で不合理な待遇の相違の解消等を行うに当たっては、基本的に、『労使で合意することなく通常の労働者の待遇を引き下げること』は、望ましい対応とはいえない」ことが示されています。


労働者の業績又は成果に応じて支給する基本給

原則となる考え方

 基本給であって、労働者の業績又は成果に応じて支給するものについては、業績又は成果が同一ならば同一、相違があるならば相違に応じて支給しなければなりません。なお、基本給とは別に、労働者の業績又は成果に応じた手当を支給する場合も同様です。

【問題とならない例】

例1

 基本給の一部について、労働者の業績又は成果に応じて支給しているA社において、所定労働時間が通常の労働者の半分の短時間労働者であるXに対し、その販売実績が通常の労働者に設定されている販売目標の半分の数値に達した場合には、通常の労働者が販売目標を達成した場合の半分を支給している。


例2

 A社においては、通常の労働者であるXは、短時間労働者であるYと同様の業務に従事しているが、Xは生産効率及び品質の目標値に対する責任を負っており、当該目標値を達成していない場合、待遇上の不利益を課されている。その一方で、Yは、生産効率及び品質の目標値に対する責任を負っておらず、当該目標値を達成していない場合にも、待遇上の不利益を課されていない。A社は、待遇上の不利益を課していることとの見合いに応じて、XにYに比べ基本給を高く支給している。


【問題となる例】

 基本給の一部について、労働者の業績又は成果に応じて支給しているA社において、通常の労働者が販売目標を達成した場合に行っている支給を、短時間労働者であるXについて通常の労働者と「同一」の販売目標を設定し、それを達成しない場合には行っていない。
⇒相違に応じた支給を行っていません。


労働者の勤続年数に応じて支給する基本給

原則となる考え方

 基本給であって、労働者の勤続年数に応じて支給するものについて、勤続年数が同一ならば同一、相違があるならば相違に応じて支給しなければなりません。

【問題とならない例】

 基本給について、労働者の勤続年数に応じて支給しているA社において、期間の定めのある労働契約を更新している有期雇用労働者であるXに対し、当初の労働契約の開始時から通算して勤続年数を評価した上で支給している。

【問題となる例】

 基本給について、労働者の勤続年数に応じて支給しているA社において、期間の定めのある労働契約を更新している有期雇用労働者であるXに対し、当初の労働契約の開始時から通算して勤続年数を評価せず、その時点の労働契約の期間のみにより勤続年数を評価した上で支給している。


労働者の勤続による能力の向上に応じて行う昇給

原則となる考え方

 昇給であって、労働者の勤続による能力の向上に応じて行うものについて、勤続による能力の向上が同一なら同一、相違があるならば相違に応じて昇給を行わなければなりません。

【通常の労働者との間に賃金の決定基準等の相違がある場合】

 通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間に基本給、賞与、各種手当等の賃金に相違がある場合で、その理由が賃金の決定基準・ルールの相違であるときは、「通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間で将来の役割期待が異なるため、賃金の決定基準・ルールが異なる」等の【主観的又は抽象的な説明】では足りず、賃金の決定基準・ルールの相違は、適切と認められる【客観的及び具体的な実態】に照らして、不合理であってはなりません。


【定年後に継続雇用された有期雇用労働者の取扱い】

 定年後に継続雇用された有期雇用労働者についても、同一労働同一賃金の規定の対象になります。有期雇用労働者が定年に達した後に継続雇用された者であることのみをもって、直ちに通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理ではないと認められるものではありません。


派遣労働者について

 派遣労働者についても、上記と同様に考えます。ただし、派遣労働者の場合には、比較対象になるのが派遣先の会社の正社員等である、という違いがあります(派遣会社で労使協定を結んだ場合は、その労使協定により労働条件を規定していいことになっています)。


同一労働同一賃金の施行時期

 同一労働同一賃金の規定は、2020年4月(中小企業の短時間・有期雇用労働者に係る規定は、2021年4月)より施行されています。中小企業でも、対応する必要があります。




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