富田社会保険労務士事務所

  1. ホーム
  2. 同一労働同一賃金等
  3. 同一賃金対策の進め方

同一労働同一賃金対策の進め方

 同一労働同一賃金対策、進んでいますか?
 各企業は、正社員と非正規社員の待遇について、不合理な差を設けてはいけませんし、待遇差について(求められた場合は)説明をしなければなりません。
 このページでは、同一労働同一賃金対策の具体的な進め方についてまとめました。


同一労働同一賃金の規定の概要

 【同一労働同一賃金】の規定は、大きく、次の2つのものから構成されています。企業側から見れば、「待遇の違いを、合理的(=リーズナブル)な違いにしておくこと」、「説明を求められたら説明すること」が必要になります。

【同一労働同一賃金の規定の概要】

①「正社員」と「パートタイマー、有期契約社員、派遣社員」の間の、待遇の相違は役割や仕事内容に応じてリーズナブルな相違でなければならない
(もし、正社員と同じ扱いをするなら、同じ待遇でなければならない)

②「パートタイマー、有期契約社員、派遣社員」の方々から、待遇の相違について説明を求められたら説明しなければならない

※派遣社員の方については、原則として、「派遣先の会社の正社員」を比較対象とします(派遣会社で労使協定を結んだ場合は特例的な取扱いがされますが、その内容については割愛させていただきます。ご不明な点等がございますときは、どうぞお問い合わせください)。


同一労働同一賃金ガイドラインについて

 実際に各企業内で、同一労働同一賃金の規定に沿った制度を構築する際のガイドライン(同一労働同一賃金ガイドライン)が発出されています。実施に各企業で賃金規定等を見直す際には、このガイドラインを参照しながら、見直していくことになります。

※このガイドラインの詳細等については、下記の【同一労働同一賃金ガイドライン】などのページをご参照ください。

【同一労働同一賃金ガイドライン】
【同一労働同一賃金】Vol.1 基本給の取扱い
【同一労働同一賃金】Vol.2 賞与等の取扱い
【同一労働同一賃金】Vol.3 手当の取扱い
【同一労働同一賃金】Vol.4 福利厚生等
【同一労働同一賃金を動画で解説!】

同一労働同一賃金化の手順の概要

 次の5つのStepで進んでいけば、前記のガイドラインに準拠した賃金体系が構築でき、また、説明を求められたら説明することができるようになります。

【全体の流れ】

Step1
並べて比較
正社員とパートタイマー、有期契約労働者等の賃金規定を並べた表を作り、比較します。
Step2
違う点につき検討
違う点につき、どう対応するか検討し、決定します。
Step3
就業規則や賃金規定の改定
検討した内容につき、社内の手続きを踏んで、就業規則や賃金規定に反映させ、制度化します。
Step4
説明資料の作成
従業員から説明を求められたときのために、上記の内容をまとめた説明資料を作成しておきます。
Step5
従業員への周知・説明
社内の重要な制度の改定を行ったことになるので、従業員への周知・説明をすることをお勧めします。

各Stepについて

並べて比較

 「正社員」、「パートタイマー」や「有期契約労働者」等の従業員の種類を横軸に、基本給、賞与や役職手当などの規定を縦軸に並べた表を作り、それぞれの内容について比較します。

違う点につき検討

 違う点につき、どう対応するのかを検討します。ガイドラインの内容を踏まえた上で、同一にするのか違いを設けるのか、違いを設けるとしたらどういう違いであればよいのか、といったことを検討します。
⇒ 後記の【『リーズナブルな違い』の決め方】をご参照ください。

就業規則や賃金規定の改定

 決定した内容につき、社内の手続きを踏んで、就業規則や賃金規定に反映させ、制度化します。なお、就業規則の内容について変更があった場合は労働基準監督署への届出が必要になります。

説明資料の作成

 従業員から説明を求められたときのために、説明資料を作成しておきます。説明すべき事項は、待遇の違いの内容と理由です。また、説明方法は、基本的には、「資料を活用しながら口頭で説明すること」とされています。
※説明すべき事項を全て記載した資料で、容易に理解できるものを交付する等の方法でもよいことになっています。

従業員への周知・説明

 社内の重要な制度の改定を行ったことになるので、従業員への周知・説明をすることをお勧めします。なお、就業規則の内容について変更があった場合は、その変更点について周知をしなければなりません。


『リーズナブルな違い』の決め方

どういう違いであればよいのか

 前記の手順を進めていく中で最も大きな問題になってくるのは、「どういう違いであればよいのか」という点です。一番最初にも記したように、この「違い」は、「合理的(=リーズナブル)な違い」であることを求められます。他の言葉に置き換えると、「全員が納得できる違い」、「公平な違い」といった言い方もできるかと思います。
 ガイドラインでも、「正社員とは将来の役割期待が異なるため、賃金の決定基準・ルールが違う」といったような説明や理由では不十分で、「客観的及び具体的な実態に照らして、リーズナブルでなければならない」としています。

データや数字に基づいた「違い」を!

 では、どうすればよいのか?
 私は「データや数字に基づいた違い」にすることをお勧めしています。数字で説明できる違いということです。
 なんらかの評価尺度に基づいて「数字で説明できる」のであれば、「合理的(=リーズナブル)な違い」として認められやすいものになり、従業員に説明をするにしても、理解を得やすいものになります。

 一番わかりやすい事例としては、次のようなものが挙げられます。

基本給のうち【業績又は成果に応じて支給するもの】についての事例

 基本給の一部について、労働者の業績又は成果に応じて支給しているA社において、所定労働時間が通常の労働者の半分の短時間労働者であるXに対し、その販売実績が通常の労働者に設定されている販売目標の半分の数値に達した場合には、通常の労働者が販売目標を達成した場合の半分を支給している。

 簡単に言うと、「労働時間、販売目標が通常の労働者の半分なので、通常の労働者の半分を支給している」という事例です。これほどわかりやすいケースは多くはないかもしれませんが、全員が納得できるケースであることがおわかりいただけると思います。
 逆に、この前提条件で、「通常の労働者の3分の1に相当するものを支給している」場合は、この他の条件がすべて同じであれば、「合理的ではない違い」と判断される可能性が高くなります(この他に、例えば「販売目標未達の場合の責任の程度」などに違いがあれば、「半分」でなくても合理的と判断されることがあり得ます)。
 いずれにしても、全員の納得が得られる「リーズナブルな違い」にするために、なんらかの評価尺度に基づいて【数字】で説明することができる、「データや数字に基づいた違い」にすることを基本とすることをお勧めします。


どんな事項でも数値にできます!

 どんな事項でも数値化(定量化)することができます。できない事項はありません。
 数値化できれば、可視化することができるようになり、関係者全員で情報を共有できるようになります。
 この【数値化 ⇒ 可視化】は、たしかに最初は手間がかかります。どうやって数値化しようかと考え試行錯誤することになりますし、可視化するためにもどういう形で可視化するか等のことを検討、実行しなければなりません。しかし、数値化・可視化することで、いままで見えていなかったいろいろなことが見えてくることのメリットは計り知れないものがあります。会社にとって、とても有益な情報へのアクセス権を手に入れることができるのです。
 この同一労働同一賃金対策に限らず、本気で働き方改革を行い、より良い人材が集まる会社にしよう、発展させていこうというのであれば、出来る限り早い段階で、労務管理全般について、業績などの数字と同様に数値化をすることをお勧めします。労務管理も、【定量的に】行うべきだと思います。
 「データに基づいた労務管理」を行うことをお勧めします。


同一労働同一賃金の施行時期

 同一労働同一賃金の規定は、2020年4月(中小企業の短時間・有期雇用労働者に係る規定は、2021年4月)より施行されています。中小企業でも、対応する必要があります。




 労務に関するご相談、助成金の申請に関するご相談、顧問契約に関するご相談等、どうぞお気軽にご相談ください。
 お問い合わせは、下記の【お問い合わせ】よりお願いいたします(クリックすると、お問い合わせのページにジャンプします)。

お問い合わせ

お問い合わせはこちら!